研究概要 |
TiNi形状記憶合金及びその接合部の機械的性質の研究として, 加熱冷却と変形の繰返し熱・力学サイクルに対する形状記憶効果と変態擬弾性のサイクル依存性を検討した. 実験は, 直線に形状記憶処理したワイヤーの試験片について, 引張試験, 負荷除荷試験, 応力緩和試験において, 熱処理温度, 予ひずみと環境温度の実験条件を変えて行った. この基礎的な熱・力学サイクル試験により次の知見が得られた. (1)応力の小さい範囲で生じるR相変態は熱・力学サイクルの繰返し数が大きくなるにつれて小さくなる. (2)応力誘起M変態による降伏段は20°Cでは水平となるが, 80°Cでは降伏の開始点がはっきりせず, 降伏段が右上りの傾向を示す. 熱・力学サイクルの繰返し数が大きくなるにつれて, この降伏応力は低下する. (3)形状記憶効果で回復する可逆ひずみは, 20サイクル以降ほぼ一定値を示す. 各サイクル終了後の残留ひずみは, 繰返し数が大きくなると増加する. (4)変態擬弾性域では, 繰返し数が大きくなると, M変態と逆変態降伏応力は減少する. (5)回復ひずみエネルギと散逸ひずみエネルギは, サイクルの増加により減少していく. (6)熱・力学的考慮による構成式で応力緩和の傾向を表せる. (7)応力-ひずみ関係は, ある程度の繰返し数で安定する. (8)抵抗溶接による静的強さに関しては, 母材の強度の約50%であり, 実用化の見通しが得られた. (9)予ひずみ1〜2%の下での加熱冷却と変形の繰返し数が30回までは, 形状記憶合金の線材および溶接線材についての形状記憶効果の差異はほとんど認められない. 溶接線材に関して, 繰返し下での形状記憶効果の低下についてはさらに検討する必要がある. (10)形状記憶合金熱エンジンによるSMAコイルの疲労試験により, 破断繰返し数はねじりひずみ振幅と共に小さくなる. 両者の関係は, Coffin-Manson則に比べて, すこし下に凸になる.
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