これまでの潤滑油の研究の多くは、焼付きや摩耗などの表面損傷に大きな関心が向けられていたが、近年の省資源・省エネルギー志向により、各種潤滑油の摩擦特性が重要な位置を占めるようになってきた。本研究は各種潤滑油のスティック・スリップ特性を把握することにより、潤滑油の摩擦低減に関してその作用機構を探ろうとするものである。 ところで、スティック・スリップ現象は、摩擦の速度特性によって決定されるが、その速度特性と潤滑剤の性質との間の関係については、ほとんど明らかにされていない。また、スティック・スリップ現象は精密機械の精度にも影響を与えるため、極力取り除くことが好ましいが、前述のように潤滑剤の性質との相関がわかっていないため、この機構の解明が望まれている。 本年度に行なった内容は以下の通りである。 1.ボール・オン・ディスク型スティック・スリップ試験機の作成。 2.一定速度においてスティック・スリップ発生の限界荷重を求め、それを評価の指標としての解析。 得られた主な知見は以下の通りである。 1.一枚のディスクでも、場所の違いによる微妙な表面性状変化が、結果に大きな影響を与える。 2.そのため、試験片調製・表面研摩には細心の注意を払う必要がある。 3.粘度指数向上剤として入れられる高分子化合物は、それ単独ではスティック・スリップ特性にさほど大きな影響を与えないが、油性剤と共存させると、油性剤の働きに大きく影響を与える。
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