研究概要 |
本研究は高精度の内歯車をホブ切りによって歯切りするのが目的で, 工具のホブについてはその設計, 製作が可能となったので, 歯切り装置のホブヘッドの開発研究を行い, 実用化を目指した. 先ず, ホブヘッドの設計に当り, 切削力を見積もるために内歯車のホブ切りの解析を行った. その結果, 通常のホブ切りと比べ, 厚くて長い切り屑を出すことが判明した. 実際に切削トルクをm=3のホブを用いて測定した結果, 外歯車を同じ条件でホブ切りする場合の約2.5倍に達した. このとき駆動歯車にバックラッシュがあるときは衝撃力が働き切削量とは関係なく大きくなることが判った. そこで試作したホブヘッドは使用するホブ盤KR-1000型(最大モジュール10)の能力を考慮して最大モジュール6として設計した. ホブヘッドの本体は32mmの鋼板を溶接して製作した. ホブヘッド構造の要点は, 歯切りは断続切削で行われるので歯車による駆動系のバックラッシュを如何にして取るかにあった. 構造上フライホィールを装着できないので実験を重ねて駆動歯車部に合成樹脂材の歯車を付けてその歯車を回転方向と逆方向に回してバックラッシュを除いた結果, DP=5, Z=63の内歯車を切込み11.5mmで切削速度40m/min, 送り2.25mm/revで歯切りができた. このとき切削中のホブヘッドの振動は5μmで強度は十分であった. 駆動歯車にバックラッシュがあると同じホブヘッドを使用しても振動は2倍以上に大きくなった. 実験では切削中にホブ盤の振動と所要動力を測定したが, 動力は切削量に関係して, 振動はバックラッシュの有無によった. 振動のない状態で歯切りした歯車の精度は特にピッチ誤差が良くて最大の累積ピッチ誤差が19μmで, JISでは最高精度の0級であった. 通常, 形削りによる内歯車のピッチ精度はよいものでJIS 3〜4級であり, 当初の目標を一応達成できた.
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