研究概要 |
はく離直前の状態にある流体、あるいははく離した流体と壁面との干渉効果を利用して境界層はく離を防止、あるいは軽減する、いわゆるはく離の自己制御の可能性について調べることを目的として実験を行った。まず粗面壁上に出来る微少なはく離渦と主流との干渉について調べるために、二次元非対称ディフューザの開き壁をサンドペーパー,ハニカム,リブレット,グルーブの4種類の粗面に交換し、(1)壁面静圧(2)順流率(3)速度分布(4)乱れ強さを測定し、水力学的に滑らかな金属壁の場合と比較した。ディフューザ開き角は10゜、ディフューザ長さ/入口巾=20、入口条件は二次元チャンネル乱流、出口は大気開放で、レイノルズ数は4.2×【10^4】とした。その結果、以下の点が明らかとなった。1)開き壁全面を粗面とした場合:粗面の構造にかかわらず、はく離領域は上流に移動し、圧力回復率は低下する。しかし、粘性底層厚さの60倍以下程度の粗さの場合には、この影響は無視できる。グループではピッチの増大に伴って、はく離初生点の上流への移動、はく離領域の拡大、圧力回復率の低下が見られる。2)はく離領域のみを粗面とした場合:粗面の構造にかかわらず、はく離初生点の位置は変化しない。ハニカムの場合は、はく離領域の大きさや最大圧力回復率も変化しない。リブレッドの場合は、高さを大きくするとはく離域は下流に移動し、圧力回復も改善される。 以上の結果には、粗さ要素の後方に生ずる微小渦の影響よりも、粗さ要素を取り付けることによる壁面形状の変更、すなわち開き角の見かけ上の変化の影響の方が現われていると考えられる。したがって粗面壁は、はく離の自己制御に対して有効ではないことが結論づけられた。しかし、逆に粘性底層厚さの60倍程度の粗さでも、はく離に悪影響を及ぼさないことがわかったことは、今後、多孔質壁,軟質壁等種々の壁面をテストする上で有益な情報が得られたと言える。
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