研究概要 |
はく離直前の状態にある流体, あるいははく離した流体と壁面との干渉効果を利用して, 境界層はく離を抑制する, いわゆるはく離の自己制御の可能性について調べることを目的として, その第一段階として粗面壁の効果について実験を行った. 対象とした流れは, 二次元非対称ディフューザの開き壁上に生ずる乱流はく離流である. ディフューザはアスペクト比8の短形断面で, 一面だけが開き角が自由に変えられる様になっている. 流入条件は十分発達した二次元チャンネル乱流であり, 出口は大気開放である. まず, 全面を水力学的に滑らかなアルミニウム壁とし, レイノルズ数4.2×10^4において, 開き角θを変えながらはく離流の基本特性を調べた. その結果, (1)θ=7゜の時, 初めて開き壁の下流端近傍で瞬間的に逆流が始まり, それと同時に圧力係数の低下が始まること, (2)θ=10゜までははく離域は開き壁上のみに限られること, (3)はく離の有無にかかわらず, 各壁面における静圧は一致することなどが明らかになった. 次に, 開き壁全面をサンドペーパー, ハニカム, グループ, リブレットに取り替えて, 壁面静圧, 逆流率, 流速および乱れ強さ分布を測定した. その結果, 粗さレイノルズ数300以下の分散粗さは乱流はく離に影響しないが, その他の供試壁では, いずれもはく離が促進されることが分った. 最後に, 滑面において瞬間的な逆流が始まる位置よりも下流の開き壁のみを粗面に取り替えた場合について, 上と同様の測定を行った. その結果は全面が滑面の場合と一致し, はく離した後の流れに対しては壁面の条件は重要でないことが明らかとなった. 以上の結果, はく離の自己制御に対しては, はく離点より上流の壁面に着目すること, その際, 粗さレイノルズ数300以下とすることなど, 今後の研究に対して重要な指針が得られた.
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