血管壁の劣化(動脈硬化)へ影響を与える流体力学的因子には、過度のせん断応力および垂直応力による疲労、物質伝達の低下などが挙げられる。本年度は、とくにせん断応力と垂直応力分布を測定し、血管壁劣化への影響を検討した。 対象とした流れは、平行平板間流路に取り付けられた直角な二次元狭さくを通る層流脈動流である。この狭さく後部域における壁面せん断応力分布を拡散抵抗支配の酸化環元系の電解液を使って、電気化学的方法により測定した。同じ領域の垂直応力分布(圧力)を、拡散型の圧力変換器を用いて測定した。また、この領域の物質伝達分布を電気化学的方法により測定した。本年度の研究で得られた結果は、以下の通りである。」(1)狭さく後部における壁面せん断応力分布は、一般に指摘されている動脈硬化の前駆となるアテローム発生の分布と相対的な関係を示す。(この結果の一部を、日本機械学会論文集に投稿中である。) (2)狭さく後部壁上の垂直応力分布の変動は、読み取り値自身が小さい。したがって、本年度の測定結果から動脈硬化との対応を指摘するまでには至らなかった。 (3)狭さく後部では、物質伝達が他の部位より小さくなる。このことは、はく離域での血液から血管壁への物質(酸素やコレステロールなど)の供給が低下することを示唆している。
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