研究概要 |
本年度の研究目標は、平板上の二次元乱流境界層に前縁が半円柱状の単一モデル翼を障害物として設置し、製作・検定そして実際の使用が非常に困難とされている微小3線熱線流速計を用いて、モデル翼基部に発生する馬蹄形渦の足の部分に相当する脚渦の流動機構を明らかにすることである。先ず、渦内の三次元流れ場を計測するため最適の熱線プローブのプロング配置を決定した。既存の2チャンネルに1チャンネルの熱線流速計(購入主要設備備品)を加えることにより、流速計基本システムは完成し、微小3線熱線プローブからのデータ取り込み可能な計測システムを作成した。3チャンネル熱線流速計の出力電圧は、16ビットマイクロプロセッサ(購入設備備品)に取り付けられたADコンバータを介してディスクに保存された。独自に設計・製作した微小3線熱線プローブの検定実験を二次元平板乱流境界層内で実施した結果、充分なる測定精度を有することを確認した。次に、実験装置として、二次元回流形風洞を用い、風洞のスパン中央にモデル翼を設置する。迎え角α=0゜,5゜,10゜に対して、前述した熱線流速計によりモデル翼基部における馬蹄形渦の脚渦の3方向速度成分を測定した。その結果、二次流れ成分のベクトル線図を求めると、脚渦中に明らかに大規模な渦運動が認められ、下流方向に減衰する過程で翼から離れるが、接合部壁面のスパン方向への移動は僅かであることが判明した。更に、レイノルズ応力の各成分を求めた結果、脚渦内の乱流運動エネルギは、二次元乱流境界層と比較して、非常に大きいことが明らかとなった。以上により、本年度の研究実績は、特別に設計・製作された微小3線熱線流速計により、前縁が半円柱状の単一モデル翼の基部に発生する馬蹄形渦の脚渦内の流れ場を詳細に測定し、脚渦の三次元構造を定量的に明らかにした点である。今後、より詳細な三次元乱流構造の解明を計画している。
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