研究概要 |
本研究は、自動車や鉄道車輌などの様な地面近くを高速で走行する三次元鈍頭物体の空力特性を、実験と理論解析の両面から解明することを目的としている。昭和61年度は、比較的単純な形状のはく離を伴なう三次元物体の壁面境界近傍における基本的な空力特性を、実験的に精度良く評価する手法を確立し、次年度の研究の基礎資料を得るための一連の実験を行った。研究の過程と得られた結果を要約すると、次のとおりである。 1.ムービング・ベルト装置の開発と性能試験 風洞流速に同期して高速で走行するベルト装置を開発し、その特性試験を行った。測定部のベルト面寸法は440×620mm,ベルト速度は(5〜38)m/sである。本装置は前部フェアリング部と境界層制御の機構に工夫をしているので、ベルト装置全体のブロッケージ比も小さく、速度分布の一様性も良好である。 2.軸対称三次元物体の地面効果 鈍頭物体の空力特性に及ぼす地面境界の影響解明の第1段階として、球および長球の地面効果に関する実験を行った。その結果、球の様に地面境界と点で接する物体でも、その揚抗力に及ぼす地面効果は非常に大きい。また、主流方向に長い長球では、その地面効果の現れ方が長さに比例して、より顕著になる。また、従来からの固定地面板を用いる方法による結果とは、かなり異なった特性を示す。 3.低アスペクト比厚翼の地面効果 乗用車等の空力特性を調べる際の基礎として、アスペクト比が0.5程度の厚翼(翼厚比:約30%)を用いて地面境界の影響を評価する実験を行った。その結果、長球などの軸対称物体と異なり、地面に接する面積の大きい厚翼の場合には、地面効果が極めて顕著に現れるだけでなく、模型底面と地面との間隙,底面の勾配や曲率,表面粗さ等によって多様な変化を示すことが明らかになった。
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