研究概要 |
本研究は、吸収式ヒートポンプの主要構成要素の一つである吸収器を対象にし、蒸気吸収時にマランゴニ効果を利用する高性能吸収器の開発に関する基礎研究である。本年度に行った研究内容を以下に分類して示す。 (1)水・LiBr系の蒸気吸収では、アルキル基が8,10のオクタノールとデカノールを吸収促進剤として取りあげ、マランゴニ対流の発生機構や表面張力の測定などを行い、界面張力の大小が吸収促進に多大な影響を与えることを明らかにした。 (2)マランゴニ対流の基礎的知見を得るために、シリコンオイル表面上に加熱源を設け、表面の温度勾配によるマランゴニ効果について検討を行い、蒸気吸収時の添加剤による同効果の妥当性を実証した(論文発表済) (3)工業的に注目され、欧米諸国で精力的な研究が行われているアンモニア冷媒の吸収過程について、アンモニアハンドリングループを製作して実験を行った。吸収剤としては水を利用する2成分系と、水・LiBr溶液を利用する3成分系をとりあげ、静止吸収溶液中へのアンモニア蒸気吸収実験を行い各々の系における物質拡散係数を理論的・実験的に求めた。その結果、2成分系では物質拡散係数が3〜4.5×【10^(-9)】【m^2】/Sで、比較的良好な値が得られたのに対し、3成分系では、0.7〜1.5×【10^(-9)】【m^2】/Sと非常に低いことが明らかとなりLiBrの溶解が物質拡散を著しく低下させることを定量的に示した。これらの知見を基にアンモニア系蒸気吸収の促進に寄与すると考えられる界面活性剤を添加し、上記(1)と同様な実験を行ったが、アンモニア(液体)自体の表面張力が非常に小さく、水冷媒の場合に観察された著しいマランゴニ対流は発生しなかった。次年度は、新しい界面活性剤について、検討を行い、アンモニア3成分系における高性能吸収器の開発指針を得る予定である。(論文発表予定3件、次ページ参照)
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