本年度においては、超音波を照射することによる沸騰伝熱、とくに膜沸騰伝熱の伝熱促進効果の一般的挙動について研究を行った。伝熱面としては0.2mm径の白金細線を選び、飽和エタノール中の膜沸騰を起し、これにフエライト型振動子による超音波を照射した。まず核沸騰域については特別な伝熱促進効果は見られなかった。一方、従来は伝熱性能が劣悪で、特に伝熱促進の必要性の大きな膜沸騰域については大きな伝熱促進効果のあることが始めて確かめられた。すなわち、振動子への出力で表現される照射強度をある程度以上増すと伝熱性能が増加し始め、増加割合は照射強度に略比例し、照射しない場合の熱伝達率に対して、見かけ上最大5倍の熱伝達率を得た。実験は広い過熱度範囲について行い、各強度に対する膜沸騰特性曲線を描いた。 また、写真撮影による観察を行い、高過熱度における条件では照射強度を増すと発生気泡が小型化し、ある程度以上では微細気泡が発生するようになることを認めた。一方、低過熱度では伝熱面上に膜沸騰と核沸騰が混在するようになることを確かめ、低過熱度側での伝熱促進は核沸騰の生起に基づくとした。また、同様の考え方により、見かけ上のデータから極小熱流束点の変化曲線を示した。すなわち、超音波照射により極小熱流束点が制御でき、しかも強度増加と共に高過熱度、高熱束側に移行することを示した。
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