研究概要 |
エンジン内流動の乱流モデルによる解析は2方程式モデル(特にk-εモデル)によるものしかない。しかし、その計算結果は実際のシリンダ内流動を正しく表わしていない。本研究は応力・熱流束方程式モデルを発展させて、エンジン内流動の解析技術を確立することを目的として計画したもので、本年度の成果は以下のように要約される (1)応力方程式モデル及び乱流熱流束方程式モデルに含まれているモデル化の妥当性を実測値を基にして検討した (2)乱流エネルギ成分,レイノルズ応力,温度乱れの分散,及び乱流熱流束のそれぞれの乱流拡散(乱れによる輸送)を表す3次モーメントuiujum,uiujt,【uit^2】の従来のモデルは、実測値と非常に異なった結果を与えることを見いだした。(3)3次モーメントの統計的性質を明らかにするために実験を行い、確率分布,組織的乱流構造との関連等を求めた。 (4)既存モデルに改良を施すのみでは(2)で述べた不合理は解決できないために、従来とは全く異なった観点からモデル化を試みた。即ち先ず正規分布からのずれを考慮したキュムラント展開法を用い、流動と伝熱を支配している諸量の近似多次元結合確率密度関数を導いた。次いでこの確率密度関数から、3次モーメントを全てスキュウネス・ファクターを用いた移流速度で表した。従って本モデルは既存のような勾配形拡散モデルと本質的に異なっている。 (5)本研究で得たモデルの妥当性を検証するためにモデルを管内流,境界層流れ,壁面噴流,混合層等の流れに適用した結果、極めて良好な予測が得られることが明らかとなった。
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