研究概要 |
昭和61年度の研究実施計画のうち、(1)生体系における各種対向流型熱および物質交換形態の調査および(2)生体系の熱および物質交換形態の整理と体系化については資料収集と調査が進み、ある程度体系化ができつつある。迷網ばかりでなく、上腕部の動・静脈間でも対向流型の熱および物質交換が主流を占めていることがわかり、熱的環境への適応を可能にしている。これは鳥類や漁類にも多くみられる交換機能である。これら対向流型の熱および物質交換形態の基本モデルとして、生体膜を隔壁とするループ状の対向流型流路を考え、そこにおける流れと温度・物質の分布のシミュレーション計算を試み、流れと温度分布に関しては計算がほぼ完了した。しかし血液など体液の非ニュートン性や物質輸送は生体内の定量的物性値が未知であり、来年度以後も継続する。流路内のホログラフィ干渉法による観察と定量的解析はまず水平正方形複合対流助走区間に関して行っており、レーザ光方向に温度分布が存在する場合の積分平均温度の一解析法を開発し、この方法が各種管路内の流れ方向に三次元的温度場がある場合にも適応できるものであり、研究発表を行う予定である。また物質交換に伴う増倍現象機能も生体系では重要であり、その濃縮率を計測する手法として現有の四重極型質量分析計を用いるが、そのためサンプリング気体を分子線として噴出させたときの加速効果と質量分離効果の影響を予め知っておく必要があり、これを系統的実験で調べた。これも発表予定である。また毛細管内の流れをトレースするため新たにレーザー励起螢光法を導入することとし、まず自由噴流内における挙動から励起螢光強度と各種物理量との相関を調べた。これも発表予定である。 生体膜機能は極めて重要な因子であり、外的要因への適応性,センシング,制御系,能動輸送の増倍現象などとの関連を把握すると伴に、これを合成膜との代替の可能性を検討していきたい。
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