前年度までに、ディーゼル機関用燃料の主成分であるパラフィン系燃料は、一旦低沸点炭化水素に分解し、その後脱水素、縮・重合反応により多環芳香族炭化水素が生成され、多環化が進行して行くことを明らかとしてきた。また、真空昇華凝縮法により微量サンプルガスによるPAH成分の分析を可能とした。本年度は、前年度までの実験結果に基づき、反応流動管を用いてパラフィン系燃料の熱分解成分である低沸点炭化水素の中から、炭素数、あるいは分子構造の異なる種々の燃料を窒素雰囲気中で加熱し、微粒子の生成量、微粒子中のSOF成分とDry Sootの割合、ならびに微粒子中のPAH成分の分析を行った。また、電子顕微鏡を用いすす粒子の形状の観察、ならびに粒径分布の測定を行った。 実験の結果、微粒子の生成開始温度、ならびに生成量は燃料性状によって異なり、炭素数、あるいはC/H比が大きくなるほど生成開始温度は低く、生成量も多くなること、生成開始温度が低く生成量の多いほどすす粒子の径も大きくなること、さらに微粒子生成開始の低温度域においてはSOFの割合が高く、高温になるほどSOFの割合は減少することなどを明らかとした。 PAH成分の分析結果、すす前駆物質としてのPAHは、3環、4環、あるいは5環の成分が多く、これらのPAH成分は、実験の範囲内においては燃料性状に係わらず、いずれも微粒子中のSOFの割合が減少し始める温度になると減少して行くことを明らかとした。 以上の実験結果から、低沸点炭化水素からの微粒子の生成過程は、縮・重合、ならびに脱水素反応によりPAHを経てすす粒子に至るのがその主要経路と言える。
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