本年度は、3次元空間内のポインティングシステムの試作ならびに、空間認知に対する人間のメンタルモデルの構築を行なった。ポインティングシステムは3次元立体映像システムと3次元ポインティングデバイスとからなる。3次元立体映像システムは、2台のCCDカメラからの実画像をCRT上に交互に表示し、それと同期して開閉する液晶シャッタ付メガネをかけることにより左右画像の視差を発生し、立体感を得る。2台のCCDカメラは輻輳角の変化、上下動、間隔の変更が可能である。3次元ポインティングデバイスは2次元マウス程度の操作性かつコンパクトなものとしており、(X、Y、Z)座標の入力が可能な相対位置型入力形式である。なお、3次元立体映像システムでは、グラフィックスで左右視差のある矢印(立体カーソル)を描き、左右実画像と同期して合成する立体映像用のスーパーインポーズ機能があり、3次元ポインティングデバイスで立体カーソルを移動し画面内の任意の位置をポインティングできる。 立体映像を用いて空間内のポインティングを行ない、その成績(評価は目標点と実際に指示した点との距離の絶体値で行なった。)を検討した結果、以下のことが明らかになった。まず、本システムを用いた場合でも、良好な成積がおさめられるカメラの輻輳角は10度〜13度、肉眼における腕のとどく範囲程度であり、肉眼での精密作業空間とよく対応していることが確認された。さらに、成積は作業者の、提示空間に対するメンタルモデルと密接な関係があることが明らかになった。実験の結果、提示空間を不連続な面の集まりとしてとらえている人は必ずしも正確なポインティングができず、提示空間を不連続+連続的なものとしてとらえた方が正確なポインティングができることが明らかになった。
|