研究概要 |
IEC耐トラッキング性試験法における電源ノイズおよびトラッキング破壊に至るまでの放電発生時の高周波ノイズに着目し, CTI(比較トラッキング指数)に及ぼすこれらのノイズの影響について検討すると共に, トラッキング進行過程の機構と放電電圧および放電電流の波形解析を行なった. 得られた結果を要約すると次のとおりである. (1)連続課電法, 間欠課電法, 電子タイマーと電磁タイマーによるノイズの影響について検討した結果, 間次課電法は連続課電法に比べてトラッキング劣化を促進させ, ノイズは実験値のばらつきを少なくする. (2)基本波に重畳するノイズの位相角を90°とした場合には, ノイズ電圧が1kV付近まではトラッキング劣化が促進され, 得られたデータの標準偏差が小さくなる. 1kVを越えるとトラッキング破壊に至る滴下数が増加し, その標準偏差も大きくなる. (3)ノイズ電圧が1kV付近まではシンテレーションの発生が多くなり, 1.3kVを越えるとグロー放電の発生が多くなる. (4)シンチレーションの熱によってトラッキング劣化が促進されるが, グロー放電はトラックの形成には役立たない. (5)ノイズ重畳位相角を30°とした場合には, ノイズ電圧が0.9kVでトラッキング破壊に至る滴下数が減少し, 1.1kVから1.5kVではトラッキング破壊に至る滴下数のばらつきはほぼ一定である. (6)ノイズ電圧を0.5kVに固定してノイズ重畳位相角を各種変化させた場合には, 重畳位相角の違いによってトラッキング破壊に至る滴下数が異なり, 基本波の正のピーク値におけるノイズがトラッキング劣化を促進すると共にCTIのばらつきも少ない. これに対して, 基本波の負のピーク値(位相角270°)にノイズを重畳すると, トラッキング破壊に至る滴下数が多くなると共にばらつきを大きくする. (7)IEC耐トラッキング性試験法においては, 試験時に発生するパルス性ノイズを除去するフィルタ回路を挿入する必要がある.
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