研究概要 |
自己消弧形の電力用半導体素子を用いた整流ブリッジで系統から進み電流をとらせようとすると, 転流時交流電源側のインダクタンス保有エネルギー処理が問題であり, 一般にはスナバ回路で損失となる. 強制転流つきのSCRブリッジでは重なり現象の形で有効に処理される. しかし転流コンデンサに依存すると扱う電力容量が増すにつれインダクタンス保有エネルギーをも包含する必要上耐圧・容量共に大きなものとなり, 回路構成上高耐圧素子が要求され高電力回路適用上の難点となっていた. また電流が小なる程制御が遅れる. 自己消弧形単相電圧形ブリッジベパルス電圧を発生し, 小規模パルストランスを経てSCRブリッジの強制転流電圧とする. 入力変圧器の中性点を利用する時は転流電圧振幅, 素子耐圧, ブリッジ許容電流, 交流側インダクタンスへの対応性, 電流位相遅れへの影響などの点で他方式ブリッジに比し有利であり, 高電力回路適用を容易にする. これを用いて電源より進みもしくは遅れ無効電流をとる電流形サイリスタ調相装置を構成する. 高調波低減策として残留高調波, スイッチング損失, 電源電圧利用率の点で優れている移相多重方式を採用する. 20°移相3組多重の実用性を確認した. 直流側電流に多少の脈動を許すならばエネルギー蓄積要素としての直流リアクトルのインダクタンスは低く選ぶことができ, リアクトル特有の固有容量に対し, これを調相器に適用した時の処理無効電力は大きく拡大される. また交流電流高調波への影響は比較的少なく, 回路構成上, 経済上有利であることがわかった. また調相器の遅進動作間の相互移行のためには両動作用制御信号を並行して発生しておき, 指令に従って選択使用することにより円滑移行ができた. 今後自動力率調整, 受電端電圧調整等への適用について検討していきたい. また移相多重方式のよさを失わず, 回路構成をより簡略化する方法も併せ検討していきたい.
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