電力変換装置は、直流送電用交直変換所や、直流電源、インバータ等に広く用いられているが、全てサイリスタを用いた3相他励ブリッジ変換回路であるため、無効電力の供給及び高調波の抑制といった問題が避けられない。そこで近年、高周波電力用デバイスとして注目されている、GTOをサイリスタの代りに電力変換装置に適用することを検討し、基本波無効電力を0にするよう力率を制御できることを実証し、高調波成分の評価も行なった。 1.サイリスタ電力変換装置とGTO電力変換装置を直列に接続し、12パルスコンバータを構成し、パーソナルコンピュータを用いて制御した。それぞれの点孤位相角を+α、-αとすることにより、基本波無効電力をほぼ0にし、変位力率をほぼ1に保つことができた。 その時の高調波成分を、A/Dコンバータ及びパーソナルコンピュータを用いたFFTプログラムで解析し、α=60°から120°付近では高調波成分が増大し、ひずみ電力も考慮した力率は1にはならないことが判明した。 2.変位力率を正確に1に保つため、ディジタル力率計を利用した、力率のフィードバック制御ループを製作し、直流電流及び変位力率を一定に保つ2ループ制御を実現した。 その際の、比例及び積分制御ゲインは、サンプル値制御理論から求め、実験値と比較したところよく一致した。また、安定な過渡応答、偏差の少ない定常特性が得られた。 今後の課題として、有限要素法によるデバイスシミュレーションからスナバ回路の改善を検討すること、また、発売延期のため手に入らなかったSIThyの適用について実験を行なうこと、などが残ったので、テーマを分離して、今後研究をすすめ、科研費の申請も行なっていきたい。
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