研究概要 |
従来, 高温超伝導材料の探索として準安定相の凍結が重要視され種々の方法が報告されている. 中でも超高速クェンチングが可能なレーザークェンチング法は, 有力な方法として注目されていた. 我々は, アモルファスを出発材料としてレーザークェンチングの超高速冷却を利用した準安定相の凍結を長年研究してきた. 以下に, その方法及得られた結果の概要について述べる. (1)CO_2ガスレーザを用いた走査型レーザークェンチ装置を試作し, その温度上昇のパワー依存性を実験的に求めた. また, 熱伝導方程式の解法により温度上昇, 温度分布, 冷却速度を計算し実験結果を比較検討した. (2)アモルファス薄膜にレーザークェンチを施こし準安定相の凍結を検討した. (a)V-Si薄膜 レーザークェンチングによりA15V3Si相の生成を確認した. この相は, 安定相ではあるがTc〜14Kの良好な結晶相が得られることが示された. (b)V-Al薄膜 準安定なA15V3Al相がレーザークェンチングにより生成された. Tc〜12Kは従来報告されている値より高い. (c)Nb-Al薄膜 レーザークェンチングでは, 準安定相のA15Nb3Alは生成されず, bccNb-Alの固溶体が生成された. (d)Nb-Si薄膜 レーザークェンチングにより準安定相のfCCNb3Si相が生成され, 他の準安定相であるA15Nb3Si相は生成されなかった. 以上の結果, レーザークェンチングにより, そのレーザー照射条件を適当に選ぶと, 準安定相が生成されることを実験的に検証した. この方法は, V基Nb基以外の準安定相の凍結にも有効と考えられ, 新しい準安定超伝導相の探索には有効な手段と思われる.
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