研究概要 |
本研究では、ガラス基板上に巨大な磁気光学効果を持つ均一な高濃度Bi置換ガーネット垂直磁化膜を再現性良く得る作製条件とその膜特性について検討した。 Bi置換ガーネット膜(【(Bi,R)_3】【(Fe,Ga)_5】【O_(12)】,R=Y,Dy)は、2極rfスパッタ法により非晶質膜を堆積後熱処理結晶化させる方法で作製された。膜の結晶化に要する温度はBi置換量の増加と共に減少し、Bi=2.5以上では520℃まで低下した。しかし、Bi量の増加により異種相生成温度も急激に低下するため、単相ガーネットの得られるBi量大置換量は約2.9と決定された。この値は従来得られたものの内最大の値である。また、結晶化は、少数の核発生と結晶粒成長により起こり、粒径はBi量の増加と共に非常に大きくなることがわかった。 膜質は、スパッタ中のガス組成に大きく依存することが明らかになった。スパッタガスとしてAr+【O_2】を用いた場合、膜には明確な結晶粒界が観察される。このような粒界では光散乱が大きいため光磁気再生の際の媒体雑音の原因となる。一方、純Arを用いてスパッタした場合には、膜は粒界の観察されない光学的磁気的に均一なものとなった。これは、膜中に導入された多量の酸素欠損と関連する。このことを確認するため、還元性の強いAr+【H_2】中でスパッタした結果、光学的に非常に均一な膜が再現性よく得られることが明らかとなった。しかし、このような膜の磁気光学効果は【Fe^(2+)】の生成により【H_2】量の増加と共に小さくなること、その履歴は異常な曲線を示すことがわかった。 以上の結果より、均一なBi置換ガーネット膜の最適作製条件に対し有効な知見が得られたが、膜の均一性と酸素欠損と関連について更に検討を要する。
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