研究概要 |
今年度に行った研究によって得られた新たな知見は以下の通りである。 1.Pt/Si【O_2】系粒状金属膜(GM膜)の電気伝導機構 GM膜中のPtの濃度を変化させると、原子組成比でPtが30〜40%で膜の伝導機構が金属的伝導から絶縁体的伝導に遷移する。このような金属-絶縁体転移は、アンダーソン局在という観点から説明できるが、その遷移領域において観測された、10〜15K付近の電気抵抗のピークは従来の理論では説明できない。スピン軌道相互作用によるアンダーソン局在の抑制の可能性を検討している。以上の成果は、61年秋の応用物理学会,日本物理学会で報告した。 2.GM膜のガスセンサへの応用 Pt/Ti【O_2】系GM膜は、酸素及び水素の両方に感度を持つセンサ材料であることが明らかになった。300°Cにおける膜の抵抗は、水素を導入すると大きく減少し、逆に酸素を導入すると増加した。応答時間は、水素に対しては速いが、酸素の場合比較的遅く、特に遮断後の回復時間は数10分かかる場合があった。又、酸素に対する応答時間は膜厚が厚いほど遅くなった。これらの結果から、水素の場合、膜の表面層の抵抗が低くなってそこに導電路が形成されるのに対し、酸素の効果は膜の抵抗率を上げる方向であるために膜の内部まで変化が進まないと全体としての抵抗が変化しないことが分かる。これらの成果は、62年春の電気化学協会大会において発表予定である。 3.光-化学エネルギ変換への応用 Pt/Si【O_2】系GM膜に加えて、Ru【O_2】系GM膜をコートしたSi電極を製作し、水の光分解用電極としての特性を調べた。Ru【O_2】の酸素発生に対する触媒効果は、比較的高光電流領域で観測されたが、しきい値電圧の低減はほとんど見られなかった。
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