研究概要 |
将来の高速・高効率の空間通信系の設計に有用なデータを提供することを目標に、次の2つの課題:(1),(2)に取組んだ。 (1)大気乱流と電離層乱流による受信電界強度の減少とその減少機構の解明受信電界強度の減少は、乱流による散乱に伴う受信点での電力密度のの低下(散乱損)と乱流によるアンテナ開口面での波面の乱れ(コヒーレンスの劣化)に伴うアンテナ利得の損失(利得損)による。これらの量を求める基本式を精密な理論によって定式化し、現在その数値計算を実行中である。特に利得損は超大型計算機(ベクトルプロセッサ)によっても相当な計算時間を要し、簡単ではないが、順次有用と思われる結果が得られている。近々、学会。研究会及び論文誌を通してその成果を公表していく予定である。従って、本課題はほぼ完全に達成されたといえる。 (2)大気乱流と電離層乱流による受信パルス波形の歪みと広がりの解析に対する基礎的検討 この問題を解析するための基礎方程式の整理を先ず行い、現在の商用衛星通信用Cバンドに対して、パルス波形歪みを問題なく算定できるようにした。更に、電離層乱流の影響を受け易いLバンドに対しても近似解析解を与え、その精度も評価できるようにした。以上の成果は、国内外の学会及び論文誌等によって公表する予定である。今後、基礎方程式を直接計算機で解析する課題に取組んで行くが、それに達するまででのいくつかの課題(2次元問題,上記解析解の検証,自由空間の長距離伝搬)が本研究によりほぼ解析された。以上のようにに、目標の基礎的検討は充分達せられた。 来年度は今年度の一部継続と成果のまとめを目的とした研究を継続して行う予定である。別途、課題(2)を本格的に発展させ、実用上有用なデータを提供して行きたいと考えている。
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