研究概要 |
現在, コンピュータ・トモグラフィ(CT)で対象の3次元像を直接再構成しようとする場合, 計算機の能力の不足がその実現を困難にしている. 本研究では, 将来, コンピュータの計算速度, 記憶容量の一層の向上により, この制約が除かれることを想定して, 次の立場から研究を進めてきた. (1)計算機の計算速度が向上し, 記憶容量が増えれば, 3次元画像や, 動画像等の膨大なデータを扱うことが可能となる. この様な計算機の進歩を想定して, 今のうちに3次元画像や動画像を対象とした再構成理論の基礎を構築しておく必要がある. (2)現在のCTで使われるノイズ抑制やデータ補正のための信号処理方法は極めて単純なものである. つまり, 現状では信号処理手法の良さを図る一つの尺度として, その計算量の少なさが重要視されているのである. 今後, 計算機が高速化し, 計算コストが下がれば, むしろ計算量が多く複雑でも, 高い能力を持った信号処理の手法が必要とされるようになる. 本研究では, 上記(1)の課題に対しては, 級数展開法と一般標本化定理に基づき, 円錐ビーム投影方式による三次元像再構成理論を導いた. また(2)の課題に対しては, 計算量が多くなるが, 画像の高周波の情報を失うことなく, ノイズ抑制, 画像補正を行うことのできる新しい信号処理手法として, 射影フィルタとアナログ符号の理論に基づく方法を導いた. この様な方法論により, 次のような成果が得られた. まず円錐ビーム方式により, 線源を対象の周りに一回転するだけで再構成に必要な全データが得られるが, ここで最適な標本点の決定と復元公式の存在可能性の証明を行った. また射影フィルタをCTに適した形に改良した. さらにアナログ符号理論により, 投影データに加わるインパルス性のノイズを訂正できることを示した.
|