人工知能において現在最も重要な課題は学習ないしは知識獲得である。一方、外部からの入力による知識体系の変化を扱う非単調論理の研究もここ10年の間に大きく進んだ。非単調論理はその性格からして、負の実例を利用した学習の基本的枠組みを与えるものと考えられるが、学習への直接の応用は未だ研究が進んでいない。本研究では、非単調論理のうち、特にJ.McCarthyが堤案したサーカムスクリプションに注目し、これをISA階層を持つ知識の再構成に利用する方法を検討し、非単調論理による学習システムへの道を拓こうとするものである。この目標に沿って、本年度は以下の課題について検討した。 1.論理型言語におけるサーカムスクリプション:サーカムスクリプションは元々一階述語論理式を扱うメタ推論操作なので、Prologのような一階述語論理を基礎とする論理型言語上でのサーカムスクリプションを考えることは自然である。ただし、その実行メカニズムを考えるにあたっては、失敗による否定と、論理矛盾の原因となる論理否定を区別して扱う必要がある。ここでは論理否定を矛盾の発見のみのために用い、それ以外は失敗による否定を用いることにより、論理型言語上のサーカムスクリプションを定式化した。これにより、論理型言語で表現された知識を、負の実例が引き起す矛盾の発見を契機にし、サーカムスクリプションで矛盾を解消するという手続きにより再構成する方法を確立した。 2.ISA階層を持つ知識におけるサーカムスクリプション:論理型言語にISA階層を導入した場合に、1.で述べたサーカムスクリプションを拡張した。この拡張により、ISA階層自体の再構成も行えることが明らかになった。
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