研究概要 |
まず、ストリップ線路系回路におけるパルス信号の伝搬・遅延・反射・結合・変換といった諸特性を、理論的に明確化することを手がけた。その結果、分布結合部を2区間用意してそれをループ状に結線することにより、固有歪みのない一次非巡回型符号変換回路が実現できることを、理論的に発見した。また、2つの結合部の結合度をある条件下で変えれば、2つのパルスに適当な重み付けができることもわかった。 次に、この理論予想に基づき、実際に回路を製作した。当初は、同一平面内に結合ストリップ線路を、光露光法で製作することを検討したが、所望の結合度を得るには、数A゜という製作不可能な線路間隔であることが判明し、絶縁シートをはさんだ3層構造で構成することにした。パルス発振器のパルス間隔や測定系および光露光装置の制約等で、4nsのくり返し周期の回路を試作した。結合部と非結合部の線路幅と長さ、それに絶縁シートの厚さは計算機を用いて設計した。 上記の設計値を用いてマスクパタンを10倍の拡大図により製作し、テフロンファイバグラス基板上に、線路パタンをエッチングした。絶縁シートには低損失性から20μm膜厚のテトロンを採用した。 実際の測定段階では、上下の基板の位置合わせの調整に大きな困難さを感じたが、幾つかの調整過程をへて、ほぼ所望のパルス符号変換機能が実現できた。 今後は、絶縁シートの選定,パルスの高速化,ストリップ線路の高精度化を検討していく必要がある。
|