研究概要 |
本研究は、複数種類の圧電性及び非圧電性物質を非常に薄く多層に堆積させた、いわゆる組成変調構造を利用して、所望の特性を持つ圧電性材料を合成し、これを弾性波デバイス用基板へ応用することを目的としている。昭和61年度では、まずこの様な組成変調構造の弾性的性質や圧電的性質について理論的に詳しく検討した。多層の境界面での界成分の連続性に着目して、各層が弾性波の波長に比べて十分薄い場合の系全体のマクロな材料定数を求める手法を開発した。この手法を用いて、まず圧電セラミックとエポキシから構成される組成変調構造(コンポジット)振動子について解析し、その有効性を確認した。また、この手法を用いてZnO/【SiO_2】,AlN/【Al_2】【O_3】等の互に温度係数の異なる材料の組み合わせによる特性の変化を調べた。その結果、電気機械結合係数,弾性波速度及び速度温度係数がそれらの膜厚比によって連続的に変化し、適当な膜厚比で零温度係数と比較的大きな電気機械結合係数が同時に得られることが判った。なお、ZnOの弾性波速度がSi【O_2】のそれに比べてかなり小さいので、構造の周期を弾性波波長と同程度とすることによりZnO部にエネルギーが集中し、電気機械結合係数がさらに大きくなる可能性があり、これについて現在理論解析を進めている。また、スパッタ法によるAlN膜作製も同時に進行しており、その作製条件はほぼ決定しつつある。しかし、AlN膜作製の時に残留ガスがスパッタを不安定とするため、【Al_2】【O_3】膜成長からAlN膜成長への切換えの際にArガスによるターゲットのクリーニングを行なうと共に一度高真空に引く必要があることが判った。これはAlN/【Al_2】【O_3】組成変調構造の作製に多大な時間を要することを意味する。そこで、ガスは交換せず、ターゲットの交換のみで作製が可能なZnO/【SiO_2】組成変調構造の作製も同時に試みている。
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