研究概要 |
スイッチングレギュレータは電力変換部と帰還制御部から構成され, 電力変換部として降圧形, 昇圧形, 昇降圧形を基本とする各種の回路方式が用いられている一方, 機関制御部についても出力電圧を帰還信号とする一般的な方法以外にも, 出力電圧の微分信号, 出力電流, 及びリアクトル電流等も帰還する, いわゆる多重ループ制御方式が提案されている. 本研究では, 当初, 出力フィルタの選び方によっては不安定現象を生じる昇圧形及び昇降圧形回路を対象に, その出力フィルタ要素であるリアクトルLと平滑コンデンサCの設計法を検討していた. そこでは, リアクトル巻線の表皮効果や近接効果, 寄生インダクタンス等の二次的影響を別にすれば, 電力変換部の特性は状態平均化法によりほぼ完全な解析的評価式がえられている. そのため, 出力電圧のみを帰還信号とする場合には, レギュレータの静特性及び安定性を含む動特性の条件を基に出力フィルタの設計法を確立することができた. しかし, 出力フィルタのLとCに拘束条件として課されるレギュレータの動的安定性の特性は帰還制御方式の違いにより大幅な差を生じることが分かった. 特に, リアクトル電流の変動分を帰還する一種の多重ループ制御方式により大幅な安定性改善が達成できる. 本研究では, 昇降圧形回路における変圧器の巻線電圧を積分することによってリアクトル電流の変動分を検出して帰還する制御方式につき, レギュレータの安定範囲拡大, 平滑コンデンサの小形化等の検討を行い, 実験的にもその有効性を確認した. 更に, 比較的広く用いられているPD(比例+微分)制御と比較検討した結果, リアクトル電流帰還方式の方が安定範囲, 耐雑音特性の上で優れていることが分かった. 次に, メガヘルツ以上の高周波スイッチングでも低損失・低雑音化が可能となる共振形コンバータについて, 基本特性の解析を行い, 今後必要となる計算機による解析・設計の基礎資料を作成した.
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