本研究は昭和61年度と62年度にわたる2ケ年の継続研究であり、昭和61年度は当初研究計画に従い、熟練した操船者の持つ航行環境に関する知識と推論方法を調べるために以下の研究を実施した。 まず、エキスパートシステムに関する文献の収集を行ない、これを整理して方法論の検討を行なった。さらに、航行環境の評価に関連する目標構造をこれまでの研究資料をもとに取りまとめ階層化した。まず航行環境を評価するうえで重要である他船との衝突問題をとりあげ、これにあいまい推論を適用して操船者が持つ衝突回避上の判断をモデル化した。そして、様々な出会い状況における有効性を簡便なシミュレーションで検証した。 しかしながら、操船者の知識をより正確にルールの形で収集するためには実時間で系統的に航行環境を変えて検討する必要があることから、既存の夜間専用の操船シミュレータを用いて熟練した操船者の航行履歴を収集した。これらの知識はパーソナルコンピュータ上で稼動するエキスパートシステムのプログラムに入力して、試行的に本システムによる妥当な操船方法の推論を試みた。
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