研究概要 |
本年度は、船舶の耐航性能評価に関して過去に実施した研究の結果を綜合的見地に立って検討した。 先ず第1に、耐航性能の定義は単に船舶の波浪中運動性能を言うのではなく、船舶が実際に運用される状態において安全性,操航性,経済性,使命達成度等を満足するよう船舶に賦与されるべき性能であり、これは初期設計の段階でその船舶の使命,種類,大きさ,航路等に応じて決定されるべきであることを明らかにした。従って、耐航性能の評価は、従来よりなされて来た平水中性能と同等の重要度でなされねばならない。即ち、耐航性能も平水中性能も分離して考えるべきではなく、綜合的な意味での船舶の性能の一部であり、個別に評価することの意義はないことを明らかにした。船舶に搭載される諸設備について見ると、単独の機能、性能は十分に優れていても、船舶に搭載され大洋航海の場で使用されるときの性能低下に関して評価の基準が不十分であるため正しい評価が行えないことが指摘された。特に乗組員の作業性,乗客の乗心地に関しては船舶の動揺周波数の低さの由に評価基準となるものは皆無に近い。そこで、船酔いに関する文献、資料調査を行った結果、船酔いに関する各種要因の影響度は複雑で単純に動揺加速度だけで評価基準を表し得ないことが判った。以上の点に関しては、日本造船学会会誌に発表し、来年度中に英国造船学会会誌に投稿予定である。 本年度は、従来大型計算機を用いて個別になされて来た耐航性能の評価を統分し、パーソナルコンピュータ上で評価を可能にすべくシステムを構築中である。また、OR手法を用いた、耐航性能評価シミュレーションシステムをパーソナルコンピュータ上に構築した。
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