研究概要 |
1.「表面波の重複反射」現象の実地震記録上での存在を確認するため、これまで世界中で得られている強震記録の収集を行なった。特に、1985年メキシコ地震の強震記録を重点的に収集し、著者らが保有している強震記録データセットに追登録した。これらの強震記録は諸解析に便利なようにMTに編集収録した。 2.収録された強震記録に応答スペクトル解析,非定常スペクトル解析などの諸解析を施した。これらの解析の結果、幾つかの興味深い現象が発見された。例えば、1983年日本海中部地震の強震記録と1985年メキシコ地震の強震記録の非定常スペクトルは異なる地震にも拘わらず非常に酷似している。しかも、酷似が著しい強震記録はいずれも盆地状地盤内の軟弱地盤の観測点によるものであることがわかった。 3.盆地状地盤の観測点での強震記録の特性を更らに明らかにすべく、1983年日本海中部地震で強震記録を得た八郎潟干拓地において長周期微動の観測を行なった。同地点の強震記録には周期1.0秒以上の長周期領域でのパワーが著しいことから、ここでは周期10秒までの長周期微動観測システムを本補助金により新たに構成して観測を行なった。微動観測は強震記録観測点を含む広範囲域で行ない、同地点の震動特性のみならず、広域的地盤構造を明らかにすべく努めた。その結果、微動と強震記録は著しく相似なスペクトル特性を有すること、同地点は典型的な盆地状地盤構成を呈することが明らかとなった。 4.「表面波の重複反射」現象を理論的にモデル化し、種々のシミュレーション計算をして、強震記録の実測結果と比較考察した。この結果、盆地状地点の強震記録にはシミュレーションで理論的に推定される非定常性に相似する現象が見られることがわかった。
|