研究概要 |
本研究の成果を要約すると、以下のようである。 1.硬化コンクリートを対象にした超音波スペクトル計測システムは、振動スペクトルとは異なり、必ずしも線形ではなく、スペクトル解析により得られるコンクリートの応答関数は振動子,供試体の形状寸法等により僅かに異なった結果となる。しかしながら、一定感度の振動子を使用すれば、コンクリートの品質を的確に評価することができる。 2.応答関数のエネルギースペクトル密度では、定量的な品質評価は困難であるが、エネルギースペクトル密度を積分した応答関数のエネルギーによれば、コンクリートの品質を定量的に評価できると思われる。 3.コンクリートの締固めが悪く、単位体積重量,音速が小さい供試体程,更に粗骨材の最大寸法が大きくなる程、20KHz以上の高周波数成分が透過しにくくなる。コンクリートの音速は品質が悪くても必ずしも低下するとは限らないが、超音波スペクトルはコンクリートの品質により変化するため、より的確な品質評価が可能となる。コンクリートの品質と応答関数のエネルギーとの定量的関係を得ることが今後の検討課題である。 4.コンクリートの音速はアルカリシリカ反応による膨張とともに低下するが、音速の低下に対応した応答関数の高周波数の減衰があり、特に70KHz以上の成分が著しい減衰をしている。 5.練り上がり直後のセメントペーストの応答関数は10KHz程度の周波数が僅かに透過する程度であるが、時間の経過とともに高周波数成分が透過するようになる。フレッシュコンクリートあるいはペースト中では波動の減衰が大きいために、超音波スペクトル計測システムは線形となる。したがって超音波スペクトル解析はこれらの物性変化を調べる上で有効な手段となる。
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