石油の地下備蓄や高レベル原子力廃棄物の地層処分などの問題と絡んで、岩盤の浸透解析が岩盤力学の主要テーマとして関心を集めている。たとえば、原子力廃棄物からの核種移行は岩盤浸透流に大きく左右されるのであって、従って、その解析手法の確立は、計画全体の安全性の評価に不可欠である。岩盤は、一般に地質不連続面によって縦横に切断されているのが普通であって、極めて不連続性の高い材料である。また地下深所の水の流れを記述する必要があるため、必然的に応力との連成を考慮した解析手法が望まれる。この研究の目的は、不連続性岩盤をそれと等価な多孔質媒体に変換する一般的手法を開発すると共に、不連続面の非線型挙動を取り入れることによって、応力と水との連成を考慮した浸透の基礎式を導くことである。得られた結果を要約すると、次の通りである。 1.地下備蓄や高レベル原子力廃棄物の地層処分などの例においては、対象とする岩盤は極めて広範囲であって、従って、規模の大きい断層を除く多くの地質不連続面は弾性体中の欠陥としてあつかうことができる。この観点から、欠陥を多数含む弾性体の弾性コンプライアンス及び不連続を通って流れる水の平均透水テンソルを誘導した。また、不連続面の非線型挙動に注目して、応力と水との連成を考慮した浸透問題の基礎方程式を導いた。 2.理論的に誘導された弾性コンプライアンスや透水テンソルの有効性を実証する目的で、数値実験、現位置試験のデータ整理を行った。得られた理論式の妥当性がほぼ検証できたものと判断された。 以上の成果を踏まえて、次年度以降、連成問題を具体的に数値解析によって解き、連成の物理的意味をさらに検討すると共に、実岩盤からのデータ収集に努め、解析手法の信頼性を高めて行く方針である。
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