研究概要 |
亀裂性岩盤や砂質地盤において、トンネルの内空変位や地表沈下あるいは斜面崩壊や地すべりの問題等を考えるとき、重力場における岩質粒状体の流動現象としての考察が有効と思われる。この点では従来のすべり線解析や有限要素法のような連続体としての取扱いでは不十分であり、要素の自由な離散化と回転運動を許すところの離散剛要素法(以下DEMと略す)の実用化が望まれる。 そこで本研究では、、これまで定性的解析が主であったDEMに定量的取扱いを可能にするための基礎理論の検討,要素定数の決定のための実用的試験法の開発,粒状体地盤中のトンネルのDEM解析と模型実験の比較検討を実施した。その結果、以下のような研究成果を得た。 1.要素定数としてのばね定数,粘性定数の解析結果に与える影響を明らかにし、差分近似式と解析手順の改良による計算の能率化を図るとともに、実用的要素数500個程度への拡張を可能にした。 2.実粒子の要素定数を決定するための実用的試験法として、個別粒子に対する落下反発試験と粒子集合体に対するせん断試験による方法を開発した。 3.粒状体地盤中のトンネルのDEM解析と模型実験結果を照合し、DEMの空間的,時間的適用性を明らかにし、定量的解析の可能性を示した。 以上のような本年度の研究目的が十分に達成されたことを受けて、引続き原位置岩盤のビデオ録画とパーソナルコンピュータのスーパーインポーズ機能とグラフィック機能を利用した亀裂性岩盤の自動要素分割法の開発,多角形要素集合体の大型計算機用汎用プログラムの開発,亀裂性岩盤や砂質地盤のDEM解析データの集積による標準的応力〜変位挙動に対するバックデータの整備など、DEMの実用化のために必要な基本課題に研究を進めている。
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