61年度においては、以下の研究を行い、いずれもその成果を論文として完成させている。 1.海岸波浪の伝播とソリトンモード:海岸波浪がソリトンを基準モードとした微視的構造を持つことを、現地波浪の伝播過程を調べることによって示したものである。この成果は第33回海岸工学講演会論文集に掲載。 2.海岸波浪の波高分布に関する研究:長い伝播過程を経た海岸波浪はいわゆる熱平衡状態に達しているとの仮定の下に、海岸波浪を無数のソリトンから成る巨視系として扱い、その波高分布をエントロピー最大条件によって理論的に決定し、観測データとの比較によってその適用性を実証した。 3.海岸波浪のエネルギー分布に関する研究:海岸波浪のエネルギー配分は最大生起確率条件に従って行われるとして、エネルギー分布を確率的に導き、それが観測結果とも良く一致することを示したものである。 4.包絡ソリトンモード表示に関する研究:海岸波浪の時系列を支配するものとして波群に着目し、波群を伴う不規則波の包絡ソリトンモード表示を試み、その適用性を観測データによって実証した。 5.長波の伝播に関する研究:ソリトンを基準モードとするような非線形長波の2次元伝播に対する計算法を提案し、日本海中部地震津波に適用してその実用性を明らかにした。これは、海岸波浪の2次元浅水変形の巨視的記述法の確立に対して途を拓いたものである。 6.海岸波浪の内部特性のソリトンモード表示:海岸波浪の微視的構造を工学的に重要な水粒子速度などの内部特性に関して明らかにするため、現地データを用いて海岸波浪の内部特性に対するソリトンモード表示を試み、内部特性を含めて海岸波浪がソリトン列として扱えることを実証した。
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