研究概要 |
著者らはすでに、所与の治水安全度を確保するのに必要な排水施設の容量と貯留施設の容量との関係を表わす曲線(等危険度線)の式を理論的に導いたり。等危険度線の式は3つのパラメーターを含む。これを全国の実測雨量資料に適用し、これらのパラメーターを等高線で表示しておけば(等高線マップ)、標準等危険度線の考え方が、1地点のみならず、全国各地における貯留施設を持つ治水システムの計画手法に、さらに有効かつ簡便に利用できるものと考えられる。等危険度線を実測降雨資料から描くには、連続した時間雨量資料が必要である。気象庁によりアメダスが運用されはじめて約10年になる。この雨量資料を用いて各測点の等危険度線作成に必要なパラメーターを求め、これを等高線で表示することを試みた。 理論解析から、一定量放流方式に対して、等危険度線は2〜3次曲線となることが示されている。都市河川等においては、各洪水ハイドログラフのピーク値と継続時間の相関係数は低い。もしこれらが独立であれば、等危険度線はほぼ3次曲線となることがわかっている。近畿圏の諸地点の連続時間雨量資料に対する適用結果より、氾濫のリターン・ピリオド5年に対して、2.51〜4.81次曲線、平均的には3.49次曲線であることがわかった。これは理論曲線よりやや次数の高いパラボラとなることを示しているが、次数が低い方がより大規模な治水施設,すなわちより安全側の施設を計画することになることを考慮すれば、標準等危険度線として3次曲線を選んでおくことには、実用上も,理論上も,高い意議があるものと考えられる。このほか、標準等危険度線の作成には、5年あるいは10年確率ピーク時間雨量,一雨総雨量の推定が必要である。これらを近畿圏の主要観測所について求め、地図上にプロットしたもの(等危険度線マップ)を作成した。
|