研究概要 |
昭和61年度の研究成果をふまえ, 生活圏レベルを生計機能が営める程度の居住単位に限定するとともに, そこで不可欠な最低限の地域施設サービスの種類と水準ならびにその立地分布の実態について実証分析を行った. その際, 住民の意識レベルからみた生活水準の評価についてもあわせて考察した. 対象地域としては前年度の鳥取県の他に, 新たに鳥取県を加えた. さらに北陸地方についても補完的な分析を行った. ついで, 経営上立地が困難と思われる地域において, 生計を維持するための施設がどのようにすれば立地可能となるかという点から, 地域経営分析のための数理分析モデルを構築した. その際, 対象地域として山村地域における小規模宿泊施設を取り上げた. 昨今, このような地域においてスキー客等を対象としたレゾート型の地域開発に地域活性化の活路を見い出そうとする試みが注目されている. このような場合, レゾート客を収容する小規模宿泊施設が必要となるが, それが経営上からみて成立しえるかどうかが成否の鍵となっているのが実状である. そこで, 以上のような地域に共通にあてはまると考えられる経営条件を吟味し, これらの基本的な仮定の下に小規模宿泊施設の経営成立性についての診断ならびに意思決定のための分析モデルを開発した. その際, 年単位の短期的な意思決定を行う問題を扱う「短期分析モデル」ならびに長期的な視点から収益分析を行い, 投資規模や施設経営の是否を決定する問題を扱う「長期分析モデル」を開発した. 後者のタイプのモデル構築においては, 長期的な経営環境に伴う不確実性をリスク分析する目的で, ポートフォリオ理論を採用した. 対象地域としては主として鳥取県の氷の山地域を取り上げ, 実証分析を行った. この結果, 過疎地域の典型的な地域開発問題を経営成立性から多角的に検討する方法論が提示できた.
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