1.生活圏レベルを生計が営みうる程度の居住生活単位に限定するとともに、そこで不可欠な最低限の地域施設サービスの種類と水準ならびにその立地分布の実態について実証分析を行った。対象地域としとは主として、島根県匹見町・鳥取県若桜町を取り上げた。ただし、得られた知見の一般性を確認する目的で、他の地域についても補足的な検討を行った。 2.対象地域に実際に立地する主として民間レベルの商サービスや医療サービス施設などを対象に経営分析を実施することにより、それらのサービスの形態と水準が周囲の居住人口の規模や分布、地理的条件、土地利用形態、交通条件等とどのように関わりあっているかについて分析を行った。このような目的から、まず、対象地域住民ならびに各種のサービス施設の経営者を対象に聞き取り調査を行った。ついで、これらのデータを基に経営分析手法(損益分岐点法)を適用し、生活を支援する各種の民間地域サービスが経営的に成立しうる最低限の水準(しきい値)を特定するとともに、当該サービスがどの程度経営的に成立しているかを計量的に明らかにした。 3.生活基盤の向上は一方で生産基盤の整備と不可分の関係にあることを地域に投下・循環するマネーフローの分析から明らかにした。 4.過疎地域の資源や自然・社会特性を最大限に活かす生産基盤の一つとして観光宿泊施設の経営成立性を取り上げた。その際、観光宿泊施設が零細な小規模経営とならざるを得ないこと、専業経営か兼業経営かが経営成立性を判定する上でも地域所得への還元のインパクトを検討する上でも重要であること、短期的視点と長期的視点からのリスク・マネジメントが必要であることを考慮して経営分析モデルを開発した。ついで、このモデルを用いて各種の実証分析を行い、過疎地域の振興策の実行可能性を論じる上で有用な情報を得た。
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