研究概要 |
今年度の目的は, 昨年度の巨視的分析をふまえ, (1)岐阜市営バスの月別輸送人員を事例に時系列分析をおこなうこと, (2)岐阜市営バスの創業史と歴史的背景を整理することであった. まず時系列分析によれば, 岐阜市営バスのバス離れ原因について次の点が明らかになった. すなわち, モータリゼーションを素因とし運賃値上げを誘因とする複合作用によりバス離れは進行してきた. ただし値上げの影響度はかならずしも一律なものではなく, 時期により差異がある. 運賃が物価に比して割安であった前期(昭和48年以前)には, 一時的な回復できる弱い範囲にとどまった. それが49年の石油ショックを過ぎて割高になると, 慢性的な回復しない強い影響をもたらすようになった. 最近10年間におけるバス離れの直接原因は値上げにある. ここから第一に, 値上げとバス離れの間に悪循環が生じ, 値上げに「自殺行為」の側面がつよまった. 第二には自転車利用の突発的流行を派生させ, 従来のバス圏のかなりを自転車圏に変化させ, そして第三にそれまでの固定客(学生・婦人層)をもバス離れの候補集団に変質させることになった. つぎに創業史の整理を通して次の点が明らかとなった. すなわち戦後は, 財閥解体ムードが全国的に広がるなかで私企業への不信感が強まり, 一方, 地方議会からは戦争協力者が排斥されて「市民のため」が強調される世相にあった. こうした状況下, 市議会の満場一致で市営バスは誕生した. 当初から民営路線との競合が指摘されたが, 赤字になるのは「覚悟の上」で出発した. 当時のこうした経過は, その後40年間をへて現在の経営赤字問題にも波及してきている.
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