昭和63年度に計画した研究内容は、おおきく分けて次の二つであった。それぞれについて研究実績の概要をまとめると、以下のとおりである。 1.運賃値上げとバス離れは、どのような数量的関係をもつか? 全国の公営バス39団体のうちバス部門だけを専業する団体について、運賃 "上昇率"Xと輸送密度 "減少率"Yとの量的関係を回帰分析し、次の結果を得た。バス離れは、運賃が物価を突破した年度から団体ごとに始まっている。したがってXやYを定義する際、それぞれの突破年度を基準にする必要がある。基準年を一律に決めると相関は現れない。Y=1-e×p 〔-0.47X〕が回帰式である。運賃値上げは、この経験則を媒介として輸送密度を衰退させてきている。バス離れ過程の進行度団体差が見られるのは、値上げのテンポや程度に団体差があるためであろうと思われる。 2.バス運行頻度と運転手数は、どのような制約関係をもつか? バス頻度は、運転手数と無関係には決められないと思われる。バス配車のしくみ、ハンドルタイム、"仕業数"など、基本的な諸要素間の関係を路線ごとに吟味して、「バス頻度=係数×路線1kmあたり運転手数」という制約式を得た。ただし、この"係数"は、ハンドルタイム・バス速度・回送キロという3要因によって変化する。経営対策としてのバス増発と人件費削減は、このように互いに制約しあっているので、一方だけを一面的に実施するわけにはいかないと思われる。
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