1.バス乗客の減少は、現在さまざまな言葉で表現されている。これは乗客減のメカニズムが明確になっていない点に起因する。"バス離れ"(長期的減少)は、現場でいう"逸走"(一時的減少)とは別の現象である。 2.バス離れは、運賃水準が物価水準を越した時期(突破年度)から始まっている。突破年度は値上げの時期・テンポによって違ってくるため、バス離れへの突入時期にはおのずから団体差が存在することになる。 3.この点は、定量的な回帰分析にとって基本的な知見となる。すなわち突入時期の違いを無視してしまうと、運賃値上げと輸送密度の間に明確な相関が出てこない。しかし、団体ごとに異なる突入時期をもって時系列の原点とすれば、はっきりした曲線相関が浮きでてくる。 4.バス部門だけを専業する公営団体について、運賃上昇率Xと輸送密度減少率Yの回帰式を求めたところ、Y=1-exp〔-0.47X〕となった。運賃値上げは、この経験則を媒介として、輸送密度を衰退させてきている。 5.バス運行頻度は、運転手数と無関係には決められない。バス配車のしくみを吟味したところ、「バス頻度=係数×(運転手数/路線長)」という制約式が得られた。この係数は、ハンドルタイム・バス速度・回送キロによって変化する。この制約関係を考慮することなしに、バス増車だけを進めることはできない。 6.公営バスの経営史・年表については、とりあえず岐阜市営バスを対象に創業史の社会的要因などは整理できたが、その後の発展史がまだ分析の途中にあり、衰退史は資料を集めたにとどまる。 7.実務面で重要な役割をはたす「営業係数」については、その概略の講造・特性を定式化できたが、まだ細部の吟味が課題として残っている。
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