研究概要 |
1.下水汚泥の膨化の主要原因細菌【II】-3タイプ(河野)の生理的性質は、8単離株を用いてほぼ測定を終了した。【II】-3タイプはオキシダーゼ陽性であるが、カタラーゼは陽性のものと陰性のものがあった。グルコース,フルクトース,シュクロース,酢酸,アスパラジン,グルタミン酸は良好な炭素源であった。【NH_4】-N,【NO_3】-Nは全ての単離株で良好な窒素原であったが、ポリペプトンの利用性は株によって異った。至適pHは中性のアルカリ側至適温度は20-25℃であった。全ての単離株で脱窒能はみられなかった。嫌気・好気活性汚泥法で問題となるPHBとポリリン酸の生成能がみられた。 2.【II】-3タイプにおいて還元型無機イオウ化合物がエネルギーになり得るか否かの検討を行った。即ち、酢酸を炭素源とする液体培地でチオ硫酸を含むものと含まないもので増殖の程度を比較した。チオ硫酸の酸化は有機物の消費后に開始した。このことは、【II】-3タイプは、チオ硫酸より有機物の方をエネルギー源として好むことを意味する。有機物消費后に、自己分解が、チオ硫酸を含まない培地でみられたが、チオ硫酸の酸化をした菌株では自己分解がみられなかった。このことは、チオ硫酸がエネルギー源になっていることを意味する。次の2点が今后の問題点である。(1)チオ硫酸のかわりに硫化水素を用いたとき同様の結果が得られるか、否か?(2)連続活入条件下では回分培養時と異った結果が得られないか? 3.グルコースとペプトンを炭素源とする人工下水で嫌気・好気運転を行った。25日間の培養で嫌気条件下でリンの溶出,好気条件下でリンの吸収がみられたが、糸状細菌の増殖を抑制することはできなかった。このことは嫌気・好気運転が必ずしも常に糸状細菌の増殖の抑制機構になり得ないことを示し、ある条件が膨化の抑止に必要なことを意味する。また、嫌気槽で生成した硫化水素も問題である。
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