研究概要 |
下水浄化活性汚泥の膨化の腫瘍原因細菌II-3タイプの制御の為に本年度は昨年度に引き続き単離株レベルでは千才硫酸を用いて糸状細菌II-3タイプの栄養型式を明らかにした. この細菌は利用可能な有機物が高濃度で存在するときは千才硫酸を酸化しない. しかしながら, 有機物濃度が小さいか, あるいは, 有機物が利用できない条件下でこの化合物を酸化しエネルギー源として利用する. すなはち, 連続注入条件下では混合栄養型式を示す. この結果は下水中に硫化水素が多量に存在すると硫化水素がこの細菌の選択的な増殖促進因子になり膨化の原因になることを意味する. しかしながら, 硫黄から硫酸への酸化速度が著しく遅いこと, かつ, エネルギー効率が有機物の1/5程度であることからSPTを小さくする運転式でこの栄養型式による膨化の制御が可能であると考えられる. なお, 硫化水素から硫黄への酸化速度は千才硫酸に比較して著しく速いがこの点についての検討は継続している(単離株レベルで得られた知見の一部は1988年2月のIAWPRCの国際学会で報告した). 混合レベルではグルコースとポリペプトンを炭素源とする人工廃水でII-3タイプの膨化汚泥を連続培養条件下で生成し, この汚泥を4つの異なった嫌気・好気の運転方式のもとで3ヶ月間培養し膨化の抑制の効果を比較検討した. その結果, 有機物負荷の低下, P/COD比の低下は例え嫌気条件下でPの溶出と有機物の摂取があっても膨化の抑制は効果的ではなかった. この結果は, 嫌気, 好気運転は汚泥の膨化の抑制には効果的であるが, 嫌気条件の存在の多に膨化の抑制のために他の条件が必要であることを意味している. この点についての検討は現在継続して行っている. なお, II-3タイプは021Nと同一の細菌である.
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