研究概要 |
本研究は、2次モーメント法で代表される信頼性設計法における欠点を補うべく、既に提案した高次積率の標準化手法を用いた確率変数の有効な取り扱い方を確立するとともに、その実設計への展開を行うものである。 鋼構造部材の抵抗強度に関与する初期不整量の統計データを収集し、データーバンク化を行ってその分析を行った。データーは過去30年間に発表された国内外の諸論文(統計1030編)より収集している。初期不整量としては、降伏応力度,初期撓み,残留応力,断面積の4種類をとりあげている。さらに統計処理結果に基づき、確率論的解析法を用いて、部材の抵抗強度の積率情報を求め、抵抗強度の不確定性に関する考察を行った。その結果、抵抗強度にいくらかの非正規性が存在することを示し、不確定因子の高次までの積率を考慮した部材抵抗強度の評価例を示した。さらに解析により得られた抵抗強度の統計的情報を用いて、各種設計式の信頼性レベルの評価を行い、高次積率の影響度を定量的に示した。 確率分布形の非正規性は、その確率変数の高次積率で表現出来る。本年度は不確定因子の確率分布関数を用いず、これらの積率情報だけを用いて構造系の信頼性評価を行う。特に本年度は各確率変数間に相関が存在する場合の限界状態関数の高次積率算出方法を提案し、それに基づいた構造系の信頼性評価法を示す。部材耐力が負の歪度をもつ場合、構造物の破壊確率は低くなっているが、歪度、部材間の相関係数の影響は小さい。部材耐力が正規分布の場合、むしろ歪度、相関係数の影響は前者より大きくなる。部材耐力が正の歪を持つ場合は歪度、相関係数の影響は非常に大きく、相関係数が0.0を例にとると歪度が-2.0、2.0の場合では信頼性指標にして5.6、破壊確率にして14桁もの差が生じている。こうした結果は構造物の安全性評価の基礎資料として有益である。
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