研究概要 |
1.従来の構法による根巻き柱脚では, 施工上の問題点が多く, また, 根巻き高さ等の制約を満足し, 併せて所定の力学的性能を得ることは簡単とは言い難い. そこで, 構法に依存する問題点を検討したところ, 柱脚の根巻きRC部を角形鋼管で被覆し, これによって型枠および剪断補強筋を省略し, 施工性の向上と優れた力学的性能を期待しえる構法の提案に到った. 2.提案する構法の性能確認試験を行った. 試験体は実物の1/2程度の縮尺で総数13体である. 被覆鋼管は鋼柱より外径が100mmないし150mm大きく, また, 肉厚も一段階厚いものとした. また, 根巻き部立ち上げ筋としてねじ式鉄筋を採用し, 上部にロックナットを設けてフックの代わりとした. 主な実験変数は, 根巻き高さ, コンクリート強度および立ち上げ筋の配筋方法である. 載荷は柱頭に作用する正負交番の水平加力とし, 各部の歪および変位を計測した. 3.実験の結果以下のことが明らかとなった. (1)高強度のコンクリートを用いた場合は, 根巻き高さの極端に低いものを含めて, 耐力は立ち上げ筋の降伏により決定され, 立ち上げ筋の伸びが塑性変形の支配的要因である. (2)荷重-変形特性は, 根巻き高さが低い場合にややスリップ型の傾向を示すが, おおむね紡錘形と考えてよい. (3)根巻き部に作用する剪断力は被覆鋼管が直接負担し, また, 根巻き部の曲げモーメントは, 立ち上げ筋の引張力と被覆鋼管のフランジ面に作用する圧縮力により負担する. 4.以上の実験から, 本構法は優れた力学的性能を有しており, 従来型の根巻き柱脚と比較したとき, 相当に小さな根巻き部とすることが可能であることが明らかとなった.
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