本研究のスタートに当たる本年度は、主に実験装置の作成及びその調整、並びに、より少量・より低レベルのエネルギーによる、快適暖房範囲拡大の可能性の検討が主たるテーマである。即ち、人工気候ブース内に異なった壁面温度を実現するため、それぞれ温度制御が可能でかつ吸放熱熱量の計測が可能な、一面がアルミ板からなる二つの独立空間を作成した。しかし、もともと移動熱量が小さな領域での制御と計測を、限られた装置で行うものであるので困難な面も多々あり、ダミー負荷制御を正しく機能させるのに大半を費やした。当該ブース内に、対流及び輻射の両熱供給形態を併用した室内放熱装置(放熱パネル面積約2【m^2】、床天井方向に可動な吹き出しスリット)を作成し、暖房効果と投入エネルギー量、及び室内気温と壁面温度の分布状態を把握するための実験を行った。投入エネルギーは、温水供給による温度源とし、放熱量の制御(設定室温のステップ変化)は比例積分制御弁によるVWV制御方式とした。本実験は、投入エネルギーを室内全体へとむやみに拡散をさせることなく、居住域へ集中的に分配することによって、より一層の暖房効果を得る室内放熱方式の為の、また、蓄熱壁面に関する面積・位置・温度についての基本事項把握の為のフィジビリティー実験である。その結果作用温度で代表させた等温温感に対する投入エネルギー量は、吹き出し口位置が床面に近いほど少量となり、また、設定室温が高いほどその効果が大なることが確認できた。
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