研究概要 |
より少量の, より低レベルのエネルギーによる暖房可能な範囲の拡大を計るため, 投入エネルギーを室内全体へとむやみに拡散をさせることなく, 居住域へ集中的に分配することで, 一層の暖房効果を得る室内放熱方式のフィジビリティー実験を行っている. 即ち, 対流及び輻射の両熱供給形態を併用した室内放熱装置(放熱パネル面積約2m^2, 床天井方向に可動な吹き出しスリット, 通常より低温の温水供給)を作成し, 暖房効果と投入エネルギー量, 室内気温と壁面温度の分布状態等を把握するものである. この際, 壁面の一部や放熱パネル面に潜熱蓄熱材を付加することで, 昼間の暖房(対流+輻射)効果を向上させると共に, 睡眠時(そこそこの輻射暖房)のドラフト感を排除しようとするものである. しかしながら, 潜熱蓄熱材の相変化が当初所望したような温度で定常的に生起していない, と言った問題が発生している. 〔潜熱蓄熱材は, いくつかの企業からサンプル販売されているものの, 本研究のような移動熱量あるいは温度差が小さな領域での利用には不明な点が多い〕 このことは, 本研究の根幹に係わる問題であるので, 相変化を誘発させるような工夫(温度差を一時的に増大させるなどして)により, 早期に解消させたいと考えている. ただ, 顕熱変化が主になってはいるものの, 室内壁面の一部が輻射パネルを形成するように見立てた, 輻射・対流併用放熱方式の暖房実験結果には得るものがあった. 即ち, 従来の対流放熱方式に較べ, 輻射と対流を併用した本方式では, 少ないエネルギー投入で, あるいは低質のエネルギー投入で, 人体の寒暑感的には同様の効果を与える結果となっている. このことは本研究の基本にある, 適切な熱容量を有した潜熱蓄熱壁面の適切な配置により, 室内気温分布や壁面温度分布を有効に活用し, 冷暖房用エネルギー削減と温熱環境向上の可能性を意味するものと考えている.
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