研究概要 |
初年度は、老人向け借り上げアパート制度を全国で最初に実施した中野区を主対象地として研究を進めた。 1.地域型老人アパートの地域需要の検討のため、区の高齢化の動向と住環境整備上の課題につき資料調査をもとに分析、単身世帯の増大、住要求の地域性、老人と家族の近居要求の増加等を見出した。 2.地域型老人アパートの計画条件の検討のため、先駆例である借り上げアパートを対象に、現入居者への訪問面接調査および、退出者の退出時期、理由、退出先等の資料調査を実施した。予備調査により、(1)転居による生活断絶を生じない地域配置のあり方、(2)人間交流のための共有空間のあり方、(3)老代しても自立生活を可能とする建築的条件とケア・サービスのあり方、(4)建築的安全性の必要条件、を主要な検討項目として抽出し、調査にあたった。これらについて結論する段階ではないが、注目すべき知見として、(1)借り上げアパートでは入居後ほぼ5〜6年で退出する群と、長期に住み続ける群が見出せる。(2)退出は、死去,特別養護老人ホーム、家族と同居による。(3)現入居者には寝たきり状態に近い人も含まれる他、痴呆,精神障害者の出現が問題である。(4)入居者の交流状況は、9棟のアパートごとに特徴を持つが、それは、周辺地域との関係(空間的な開放性および、これと関連する周辺住民との交流状況)と相関傾向にある、その他を見出している。 3.海外の先進例の資料収集により、時間的経過につれて、多様で高度なケア・サービスを付加する共通の動向が見出された。 4.国内の先駆例の現地調査からは、ケア・サービスの質もさることながら、住宅としての最低条件の保障に問題があり、住宅の概念から問い直す必要が指摘できる。 以上の総合的検討が今後の課題である。
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