最終年度にあたる本年は、世田谷区烏山地区をモデル地区として選び主に3つの検討課題を設定して、高齢化社会の住環境整備の具体像にアプローチした。当該地区は住宅政策面および福祉サービス面から既に基本条件を整理した世田谷区の5つの基礎的福祉エリアのひとつであり、かつ研究の中心的テーマである地域型老人アパートに相当する高齢者生活センターが所在する地区である。 ひとつめの検討課題としたのは、従来の高齢者のすまいの対策において抜け落ちていた需要の把握(方法)である。当該地区における顕在需要層(既存の4種の高齢者のすまいである高齢者生活センター、借り上げ老人アパート、都営住宅、軽費老人ホームへの申し込み者)と潜在需要層(独居、夫婦住、単身老人と未婚子住、同居、ホーム居住)との比較分析によって、地域型老人アパートの需要把握を試みた。 ふたつめの検討課題は、地域型老人アパートの計画条件である。今年度は特に、サービスセンター部と居住部分の複合形態および居住部分の集合規模に焦点を絞った。具体的には、高齢者生活センターおよび隣接する借り上げ老人アパートの居住者を対象とし、複合形態については、サービスセンターの利用状況の比較をもとに、また、集合規模については、各居住施設内外の人間関係の比較をもとに検討した。なお、この視点に立って、初年度の中野区借り上げ老人アパート居住者調査を再分析して考察の資料とした。 最後に、本研究と同時にスタートした建設省による地域高齢者住宅計画事業の指定を受けた30の自治体の計画について、その報告書等の分析をおこない、地域性を反映した高齢化社会の住環境整備の多様性を整理して、本研究の成果、とりわけモデル・スタディの位置づけをおこないまとめとした。
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