本研究の最終年度である本年は、これまでの地域側と施設利用者に対する分り易さの各種調査分析と昨年度実施した分り易さの視点から見た空間及びサイン等の実験調査の結果をふまえ、廊下型と吹抜型の2施設に対する空間と人間知識の相互作用によって生まれる分り易さの実験を行った。実験は2種類行い、1つは現状の施設のままで、被験者がどういう空間における情報を活用して探索行動を実施するか、今1つは、図形情報を消去して空間のみとした場合に、どういう探索行動を何を手がかりにして行うかの2つの実験である。1認知心理学モデルと空間探索実験(前者の実験)ー(1)探索実験前の一般知識と手続き知識に関する実験ー被験者は探索実験前にそれまでの経験等から、どういう空間の時にどういう探索大法をとるのかの知識を持ち、その最も多い知識は図形情報(館内案内板、方向指示板等)を探索手段として活用するという方法であった。(2)探索実験ー探索実験によって、あらかじめ保持する探索手段が現実の空間では必ずしも生かされていない場合が見られ、また廊下型と吹抜型では図形情報重視の仕方が変わり、むしろ吹抜型で重視される。これは吹抜型が広い視野を確保でき情報が多い事により逆に慎重に図形情報を活用しないと迷うという判断が働くことによる。(3)実験後に獲得した知識の実験ーイメージマップによって獲得した知識を見ると、慎重に探索した人は通った動線の順序で知識を獲得し、迷った人は知識も上手に獲得できていないことが分った。2図形情報を無くした場合の空間探索(後者の実験)ー(1)図形情報を無くした場合には吹抜型と廊下型の違いがより明確になり、廊下型では多くの人が迷い行動を起すのに対し、吹抜型ではそれ程見られない。 1、2の実験の結論として、現状の建物の空間計画が分り易さの視点からは多くの問題を持っていることが分かった。
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