本研究では複合的な地域公共施設の空間計画の分り易さを、施設のある周辺地域から見た視点、施設の内部空間を利用者あるいは実験による被験者から見た視点等多角的に研究を行った。1.地域住民から見た分り易さー地域から見た施設の分り易さは距離による顕著な減少の影響をうける。また幹線道路の方向と施設の位置の関係によって分り易さが変化する。2.建物の階位置、入口との関連による諸室の分り易さー諸室の分り易さは、利用者の主動線(多用される諸室への動線、玄関近くの諸室)に影響され、またそれは利用に反映(ついで利用等)する。3.複合化している施設相互の分り易さー各施設相互は、お互いの施設同士が相互の諸室が分る様な空間的配慮、相互に利用上の関連する諸室がある等の条件によって分り易さが異なる。4.施設空間と情報から見た分り易さー吹抜・中庭等広い視野を確保できる空間は、色々な情報が視認された。基本的には分り易い空間である。5.目的室探索行動実験による分り易さー目的室の探索行動は、推測・探索・確認という過程をえて探索が行なわれるが、初来館等の状況では図形情報(館内案内板、サイン等)が優位に活用される。吹抜空間等は広い視野を確保できるが、適切な情報を提示しないとその情報の多さによりかえってマイナスの効果を持つ。6.人間の知識構造と空間との対応実験から見た分り易さー分り易さは人間の知識と情報空間(空間そのものも情報であり、それに図形情報が加わる)との対応で決まってくる。今回の実験では、初来館時には人間の知識は図形情報を手がかりにしていることが分ったが、これは現状の建物が諸室の探索行動を行い易くする情報空間としては、問題を持っていることが指摘できる(例えば吹抜・中庭等の計画の仕方が利用者を諸室に誘導する上で役に立つ形で計画されていない)。
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