研究概要 |
昭和62年度は, 住宅行政に責任をもつイギリス基本自治体(ディストリクト)を対象として, イングランド, ウェールズ, スコットランドの全自治体の住宅委員会委員長に対してアンケート調査を実施した. 同時に, これら自治体が中央政府から補助金を受けるにあたって申請を義務づけられている「住宅投資計画書)ハウジング・インベストメント・プログラム)ついても送付を依頼した. アンケートの回収率は約40%, 住宅投資計画書は約55%である. アンケートについては, 単純集計, 政党派別集計, 人口規模別集計, 地域別集計などを行い, 以下のような結果を得た. (1) 公共住宅の民営化政策については, 政党派別には保守党で賛成, 労働党で反対という色分けができるが, 総じて賛成が多い. (2) 地域別ではウェールズ, スコットランドよりもイングランド南部で, 人口規模別では都市部よりも農村部で賛成が多い. (3) 反対がつよいのは公共住宅比率の高い大都市である. (4) 賛成と反対の各々の理由については, 賛成が「持家ニーズの充足」, 反対が「良質公共住宅の不足による住宅事情の悪化」をあげており, 当該自治体がどの層の住宅ニーズに力点を置いているかによって評価が異る. (5) 政策については賛成するものの, その強制的な方法や手続きについては反対する保守党自治体も多い. (6) 今後の住宅政策の動向については, 公共住宅の民営化政策が伝統として継続するとほとんどの自治体が予測しており, その場合に自治体の役割は低下していくとしている. (7) 新しい自治体の役割としては, 持家修理に対する援助や住宅協会・民間家主への援助を通して「総合的ポリシーメーカー」になる方向が注目されている. 目下, 住宅投資計画書の分析中であるが, あわせて全体のレポートにまとめる予定である.
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